夏に起こる頭痛の多様な原因と鍼灸によるアプローチ

夏の暑さで大量に汗をかくと、体内の水分と電解質（ナトリウム、カリウムなど）が失われます。
これにより血液の量が減少し、血液は粘度を増し、ドロドロとした状態になります。

この状態では、脳へ酸素や栄養を運ぶ血流が悪くなり、脳の機能が一時的に低下します。
その結果、頭痛やめまい、吐き気といった熱中症の初期症状として現れるのです。
東洋医学では、血液や体液、そして生命エネルギーである「気」が不足している状態を
「気血の不足」と捉えます。特に頭痛は、頭部に十分な気血が巡らないことで起こると考えます。

当院では、単に痛みを抑えるだけでなく、根本的な体質改善を目指します。
全身の血行を促進するツボや、水分代謝を司るツボを刺激することで、
血液の循環を改善し、脳への血流を回復させます。
また、気の流れを整えるツボ（例：百会や合谷など）に鍼や灸でアプローチすることで、
体の自己回復力を高め、だるさや倦怠感といった症状も和らげます。

夏の天気は非常に不安定で、台風やゲリラ豪雨による
急激な気圧の変化が頻繁に起こります。
私たちの内耳にある気圧センサーは、この変化を敏感にキャッチし、
その情報を脳へと送ります。

しかし、この情報が過剰になると、自律神経（交感神経と副交感神経）の
バランスが乱れてしまいます。
交感神経が優位になると、血管が収縮し、特に首や頭部の血管が影響を受けて
頭痛が引き起こされるのです。この現象は「天気痛」と呼ばれ、鍼灸治療の得意分野の一つです。

鍼灸は、自律神経の調整に非常に有効です。
首や肩周りの筋肉の緊張を緩め、星状神経節（自律神経の中枢の一つ）周辺の血行を促すことで、
神経の過敏な反応を鎮めます。
また、内耳の機能をサポートするツボ（例：翳風など）への刺激も行い、
気圧の変化に左右されにくい体づくりをサポートします。

強い日差しを長時間浴び続けることは、体にとって大きなストレスとなります。
特に、目から入る紫外線は、脳の視床下部（自律神経の中枢）に直接影響を与え、
自律神経のバランスを乱す原因となります。

また、紫外線によるストレスで、体内の活性酸素が増加し、
全身の細胞がダメージを受けることもわかっています。
これらが複合的に作用することで、頭痛をはじめとする体調不良につながるのです。
さらに、日差しが眩しくて無意識に目を細めたり、眉間にしわを寄せたりする癖も、
頭部の筋肉を緊張させ、頭痛を引き起こす一因となります。

鍼灸で、自律神経を調整するツボや、目の疲れに効く
ツボ（例：太陽、攅竹など）を刺激することで、紫外線による体のストレスを軽減します。
さらに、全身の血行を改善することで、活性酸素によるダメージを緩和し、体の回復力を高めます。

治療と並行して、ご自宅でもできる簡単なセルフケアを取り入れることで、
より効果を高めることができます。

■ツボ押し: 疲れや頭痛に効く万能のツボである合谷（ごうこく）を親指と人差し指で挟むように押してみましょう。
また、こめかみにある太陽（たいよう）というツボを優しくマッサージするのも効果的です。

■耳マッサージ: 両耳を軽く引っ張ったり、回したりして血行を促進します。
内耳の働きをサポートし、気圧の変化による頭痛の緩和が期待できます。

■首の後ろを温める: 冷房で冷えた首や肩を、蒸しタオルなどで温めましょう。
筋肉の緊張が和らぎ、血行が良くなります。

夏の頭痛が増えるのは、単に暑さや冷房の影響だけでなく、
私たちの生活習慣の変化も大きく関わっています。
例えば、暑いからといって冷たい飲み物や食べ物ばかりを摂ると、内臓が冷えてしまい、
全身の血行が悪くなります。
また、夏は寝苦しさから睡眠の質が低下しやすく、これも自律神経の乱れにつながります。

夏の頭痛は単純な冷えだけでなく、水分不足、気圧の変化、
紫外線など、複数の要因が絡み合って起こることがほとんどです。

当院では、丁寧な問診と検査を通じて、患者様一人ひとりの頭痛の根本原因を特定し、
最適な施術プランを提案します。
夏の頭痛でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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