鍼灸の歴史について

鍼灸治療

こんにちは、いりえです。

本日は鍼灸について少しお話しようと思います。
これまで鍼灸についてのエビデンスはそう多くありませんでしたが、
近年は様々な大学で臨床研究が進んでいます。
また、海外においても
慢性疼痛,線維筋痛症や慢性頭痛などでも、
その効果が認められつつあります。

さて、そんな鍼灸の歴史についてお話します。

鍼灸の歴史

鍼灸はみなさん、なんとなく発祥の地は中国だろうなと予想はつくと思います。
その通り紀元前の中国ではすでに鍼治療が広まっていたと言われています。
随分と大昔からある伝統医学です。
日本においては奈良時代に伝えられたとされています。
6世紀頃、朝鮮半島から日本に伝えられ、平安時代までは灸治療が中心で
鍼は外科的な処置を行う際に用いられたとあります。

室町時代後期になると鍼が盛んになり、様々な鍼の流派が生まれることになります。
 特にツボ(経穴)と経脈に関する研究は盛んに行われたようです。
江戸初期には経穴に関する学術的な研究書がたくさん編纂されています。

漢代には東洋医学のバイブルと言われる『黄帝内経』が編纂されました。
現在の東洋医学の理論は『黄帝内経』を基礎としています。

余談ですが、黄帝内経では女性の閉経を49歳としています。
14歳で初潮、35歳で経血量が減ってくる、髪が抜けやすくなるなど、
42歳で白髪・シワが目立ちはじめる、心身の不調が起こりやすくなる、そして49歳で閉経。
一番体力的に充実しているのが28歳。

このように現代の女性とさほど変わりがないです。ずいぶんと発達した現代の医学でも女性の体が28歳、
男性が32歳でピークを迎えるという考えはほぼ同じで、『黄帝内経』が編纂された数千年前と
体の変化が当てはまっているということです。


そうして庶民に一番広まったのが江戸時代。

元禄期に盲人の鍼師である杉山検校(けんぎょう)が、将軍綱吉の病気を治した功績により、
寵愛を受け、その庇護のもとで盲人に対する鍼灸の教育制度を確立させていきます。
杉山検校は、本名を和一といい、幼児期に伝染病にかかり失明しました。
伊勢国安濃津(現・三重県津市)に藤堂藩士・杉山権右衛門重政の長男として生まれましたが
家督を義弟の重之に譲り、17歳で江戸に出て検校の山瀬琢一に弟子入りしますが
技術が向上せず破門されています。

目の不自由な身で生きるため、江島弁天(現在の「江島神社)の岩屋にこもり断食修行を行います。
満願の日に石につまずき倒れた際、足に刺さった松葉が筒状の椎の葉に包まれていたことから
管鍼法を発明したとされます。


管鍼法とはそれまでの鍼よりやや短くて、鍼管と呼ばれる金属またはプラスチック製のストロー状の管に鍼を挿入し、
わずかに出た鍼の柄の部分を軽く叩くことにより鍼の刺入を容易した日本独自の方法です。
今でこそ当たり前の方法がこの杉山検校によって編み出されたことになりますね。
患者さんにはほぼ痛みを感じさせることなく刺入できるので画期的な方法であったと言えます。

ちなみに日本の鍼は、中国の鍼と異なり非常に細い鍼を用いています。太い鍼の方が効果があるとされていますが、その代わり痛みが強いのが特徴です。
痛みに敏感な日本ではあまり普及しなかったことを思えば、この管鍼法が一つの転機であったことは明白です。

その後、入江豊明に弟子入りして修行に励み、江戸に出て開業すると大盛況となり、鍼の名人として有名になります。

その名声を聞きつけ五代将軍・徳川綱吉が自身の治療をさせます。そして貞享2年、20人扶持の「扶持検校」として召し抱えられ、道三河岸(現・千代田区大手町)に屋敷を賜ったとされます。

天和2年(1682)世界初の視覚障害者のための職業教育施設である「鍼治学問所」を麹町(現・千代田区麹町)に開設し、後様々な経緯を経て優秀な鍼師を輩出していきました。

鍼についての歴史はこんな感じです。
お灸については
やはり古代の文献によると
2千数百年前、北方民族の独特の医療として芽生えたとされます。
その後、インドに渡り仏教医学として研究発達して来ました。 

お灸には中国北方民族の生活感による独特の考え方が根底にあります。
人間の生涯というものは、生まれたときは赤ん坊、即ち熱の塊から徐々に年老いて冷たくなり、ついには硬く動かなくなるものとして考えられていました。

こうした熱から冷去への移行を少しでも抑止し、火熱の摂取または維持によって少しでも長生きをするために考え出されたのが「お灸」です。

中国のタクラマカン砂漠、インドの大インド砂漠など、不毛の地とされているところでも、わずかなオアシスのほとりには必ずお灸の原料となる「よもぎ」が生えています。この生命力の高い植物により病気の治療をすることを考えました。

よもぎを乾燥させてもぐさを作り、灸をすえることを考えつき、きびしい寒さのために衣服をつけたまま手足の先に灸をしていましたが、結果、内臓の病気がなおることをこうして知っていきます。

このような経験の積み重ねから、灸という東洋医学独特の治療は生まれたのです。
明治初期まで医療の中心であり、漢方薬とともに広く民間療法として愛用されてきました。
その当時は子供から大人まで病気にかからないよう、体力増進を主目的として行われていました。


明治時代、医療の世界では明治政府の方針により西洋医学が強く推し進められることになります。
鍼灸や漢方などを主流とする日本の伝統的な医学は西洋医学に押され下火を迎えます。ですが、その後も民間での支持は依然強く、鍼師・灸師は国家資格として制定されることになったと言います。

戦後には現在の「あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師などに関する法律」の原型である法律が制定され、日本の鍼灸はより科学的な裏付けが強く求められるようになり、その結果、研究も学会レベルで進められるようになっていきました。

海外における鍼灸治療の解釈

さて、数千年の歴史のある鍼灸治療ですが、
さまざまな研究がされつつあり、その治療は世界的に認められつつあります。


アメリカ鍼灸情報 Accupuncture Information(米国立衛生研究所、補完・代替医療センター)によると国連の保健衛生部門である世界保健機構(WHO)が鍼灸治療が使える40以上の病態リストを作製しています。

鍼灸治療に適した病態

■消化系
腹痛
便秘
下痢
胃酸過多
消化不良

■情動系
不安
抑うつ
不眠症
神経質
神経症

■眼科・耳鼻咽喉科
白内障
歯肉炎
視力低下
耳鳴り
歯痛

■婦人科
不妊症
更年期症状
月経前症候群

■筋骨格系
関節炎
背部痛
筋痙攣
筋痛/筋脱力
頸部痛
坐骨神経痛

■神経系
頭痛
偏頭痛
神経因性膀胱機能障害
パーキンソン病
術後痛
卒中

■呼吸器系
喘息
気管支炎
感冒
副鼻腔炎
禁煙
扁桃炎

■その他
中毒のコントロール
スポーツの成績向上
血圧調整
慢性疲労
免疫系の強化
ストレス軽減


現代では米国人が鍼灸治療を求める主な原因の一つは慢性痛の緩和です。特に関節炎、腰痛などの病態による疼痛緩和です。

幾つかの臨床試験から、鍼灸が慢性痛および急性または突然の痛みに有効であることが示されていますが、それを否定する意見もあります。更に研究が進めばそれらの答えが明確になると思います。

海外の鍼灸治療

そうした中で鍼灸による改善例も多くあります。
一例としては

2002年にドイツと中国の研究チームがまとめた「女性の体をリラックスさせるハリ治療をすると、
妊娠率が大幅に向上する」という研究です。
米生殖医療学会誌に掲載された報告によると、
「体外受精をうける女性160人を2つのグループに分け、体外受精の際、一方に受精卵を子宮に戻す前後に鍼治療を実施しました。もう一つのグループには、鍼治療をせず通常の体外受精を行いました。その結果、鍼治療グループの妊娠率が42.5%に上がり、通常治療の 26.3%を大幅に上回ったというもの。

妊娠率が向上する詳しい理由は不明。しかし同学会のサンドラ・カーソン次期会長は「確実に検証されれば、妊娠率向上に役立つ手法になる可能性があると注目している」とされています。


米国では1972年のニクソン訪中をきつかけに鍼治療が盛んになりました。現在約1000万人が米国内で鍼治療を受けているとみられています。

米国衛生研究所(NIH)の専門家委員会は、中国伝統の鍼治療が、手術後の痛みや抗がん剤投与に伴う吐き気などの治療に有効であり、医療保険でカバーすべきだとする報告書をまとめました。

ただし、理論的根拠となる「気」の存在については「わからなかった」としています。
委員会が有効性を認知したのは、「手術や歯科治療後の痛みの除去」「がんの化学療法や妊娠に伴う吐き気の治療」です。また「麻薬中毒や頭痛、生理痛、筋肉痛、テニスひじ、腰痛、喘息の治療やリハビリテーション」などに役立つと示唆されています。

なぜ効くのかについての報告書は、人体のツボにハリを刺すことで鎮痛を持つ生体内化学物質の放出が増えるためと推定されました。

伝統的な鍼理論では人体内を流れる「気」と呼ばれるエネルギーで病気や治療を説明します。しかし、気の有無に関わる証拠は現段階では何も発見されていません。ですが、「気が存在しようが(治療には)関係ない」と、米国流の現実的な見方がされています。

このように、曖昧な部分かまだまだある鍼灸ですが、着実にその効果は実証されつつあります。今後においても鍼灸はまだまだ未知の分野で、解明されていない
医療分野における可能性も多くあります。


同じように人体の健康を守る医療という土俵に立ちながら医師が鍼灸やマッサージ、整体を学ぶ機会は極めて少ない。東洋医学という講義で数時間学ぶ程度でしょう。しかし、西洋医学と東洋医学が連携を深めることで更に医療というものが発展するのではないか、と思います。

改善できないことも改善の糸口が見えてくる…というのは希望的観測でしょうかね。

次回は鍼灸治療の効果についてもっと掘り下げようと思います。

今日はここまで。



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入江院長
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 ●いりえ鍼灸整骨院・院長 入江 毅

《経歴》
・関西鍼灸短期大学卒業 在学中に鍼師・灸師免許取得
・大阪にて鍼灸整骨院に勤務
・国際東洋医療学院柔道整復学科にて柔道整復師免許取得
・山口市の医療法人内鍼灸整骨院にて院長として約6年間勤務
・広島県内鍼灸整骨院にて4年間勤務
・業界17年の知識と経験をもとに廿日市市地御前に「いりえ鍼灸接骨院」を開院

《資格》 ■鍼灸師 ■柔道整復師(国家資格)